ヨーロッパ憲法批准の時期を迎えて その2

(つづき)
現在、バスク州首相がサパテロ・スペイン首相に主張しているように、仮にバスク自治州民投票で、スペインとの連邦制を一方的に宣言しても、他方でスペインが合意しなければ、それはアソシエイトの関係とさえ言えない、という理解です。「バスク首相案は、暗にバスク人民の意志に触れているのですが---? 欧州議会であなたはEUを定義して{諸市民citizensと諸国家statesの連合union}といって、{諸国家statesと諸国民peoplesの連合union、}とはいいませんでしたね?」「同時に、いろいろなところでヨーロッパの人民people of EU について触れています。しかし、欧州議会では、法的に言えば、諸国家と諸
市民が代表されているのです。」「ヨーロッパの諸制度は、民主主義的欠陥を持っていることが、しばしば指摘されますが、この憲法はこの問題の大部分を解決できるでしょうか?」
 「民主主義的欠陥という表現は、大変論争的な疑問の多いものです。しかし、それが、ヨーロッパは透明な仕方ではなく、外交の専門家の協議により、諸政府によって構築されたものだという明白な事実に触れるものだと言うことは明らかです。第2次大戦後では、こうしたやり方以外はなかったでしょう。欧州委員会The Councilは、内閣といわれていますが、事実上、立法機関です。ヨーロッパ各国が従わなければならないヨーロッパ法を作っているのです。」「あなたは執行者であると同時に立法者であるというわけですが、それはまさに民主的欠陥といわれるものの一つですね。」「それはそうなのですが、結果としてそうなっているということがあると思います。ヨーロッパ議会に権力がもっとあるようになれば、それはこうした民主的欠陥を減少させる、現実への対抗力になると思います。モンテスキューモデルから導き出されるような機能を議会が持てば持つほど民主的欠陥は少なくなるでしょう。このヨーロッパ憲法と共に、欧州議会欧州委員会council内閣と平等の立脚点を持った立法者になるでしょう。また、絶対的な予算権限を持ったものになります。」「多くの人がこの点でもっと進歩があって良いのではないかと残念がっています。」「この憲法によって民主的欠陥は大いに減少するでしょうが、全くなくなるわけではありません。なぜならヨーロッパは国家ではないからです。我々は今まで経験し理解してきた国民的政治構造のルールに従って機能するような国家をそこに想定することは出来ません。」「あなたはスペイン議会を代表して欧州議会に参加してきました。この憲法と共に、ヨーロッパ議会が立法するとき、スペイン国民議会は一つの声を持つことになります。」「ヨーロッパで起こることはすべて妥協の産物です。他者に何も強制することは出来ません。何かそうなって欲しいと言うことがあれば、それに確信を持ってもらわなければなりません。これはその国の国民議会についても同じ事です。私はスペイン議会のヨーロッパ事項委員会の議長をも務めてきましたし、同時に内閣にも関わってきました。私には役にたつヨーロッパの背景があり、国民議会が、その立法能力を奪われていると感じることがしばしばであったことを知っています。スペイン議会立法の法律の60%はヨ−ロッパ議会よりもヨーロッパ委員会において決められた規範に根拠を持ったものとなっています。これだからこそ国民議会は、行政権が、国民議会の立法権を侵害していると警鐘を鳴らしているのです。」「EU憲法の本質的な一歩前進は、ヨーロッパ外務大臣の地位を作ったことです。そこにはハビエル・ソラァナがつくことになっていますが?」「それも妥協の産物です。ヨーロッパ連合の共通の外交政策は何処が担当すべきかについては議論があるところです。ヨローッパ全体の利害を代表するべき機関がそれをになうべきで、従ってCommisionだ、という意見と、外交政策は各国の事項であるから、Councilが担うべきだという意見があります。大臣はCommissionの副代表で、同時に、内閣の外務大臣委員会議長であるべきだ、という意見です。これに対して、二重形式はうまく機能しないだろうという意見もあります。この論争は、まさにイラク戦争が勃発したときに起こり、ヨーロッパ人の間に亀裂を結果したことを想起することは重要です。」「だから議論は白熱しているわけです。」「これは我々がどのように分裂しているかを示しています。イラク戦争が我々を分裂させているわけではありません。イラク戦争が、地上、太平洋―大西洋間にたいする多元的軍備縮小論と一方的軍縮論の深刻な対立に機会を提供しただけなのです。歴史的動態をあからさまにする触媒になるような事件というものがあるものです。しかし、同時に、戦争と平和に関する外交政策は、共同化=連帯化される事が可能ではないでしょうか、丁度、義務や・割り当てについての外交政策が共同化可能であったようにです。それはバナナと洗濯機がそれぞれ何個ずつ交換可能かという現物を評価し測定する事に関して、共同化が可能なのと同じように、目に見えないこと、たとえば、世界に声を届かせることができる一国の能力に影響するような事柄についても、共同化は可能でしょう。それこそが、白熱した議論の妥協が到達する地点でしょう。」「スペインの現在野党である、ポピュラー党(大衆党)前政府は欧州憲法はニース条約についてその影響力を失いたくないので作成されたのだ、という報道を創り出しました。」「仮に権力が、意志決定を妨害する少数派の一部分である可能性があるとすると、それはヨーロッパでの本当の権力といえるでしょうか?私はそうは考えない。重要なことは少数派が意志決定をブロックできると言うことではなく、多数派が進歩を作ると言うことです。現スペイン大統領ザパテロの立場は、最初から非常にはっきりしていて、その立場を選挙の際に公約として述べています。もしフランスがドイツと同じウェイトでそれを評価するのを拒否したとしても、歴史がすでに乗りこえてしまった図式を愚直に固守して、それに反対することが出来るでしょうか?」「もう一つの重要な論争に、憲法は、ヨーロッパのキリスト教ルーツに言及すべきかどうか、というのがあります。最終的には触れないことになっています。」「私は、良かった、と思っています。この憲法は世俗的な輪郭を取っています。ヨーロッパというのはそもそも世俗的な人工的に創造されたものでそのようなものであり続けるべきです。というのも諸宗教はこの大陸では国に対する災難の元であり続けてきました。16世紀半ばに於ける、プラーハの滅亡からバルカン諸国に到るまで、ヨーロッパは数百万の人命を諸宗教の間ないしは諸国家の間の争いで失ってきました。我々はナショナリズムを克服すべきです。フランス社会党大統領故フランソワ・ミッテラン氏は、かの有名な論争の中で、ヨーロッパ議会でいいました。“ナショナリズムは戦争だ。”と。それだけでなく我々は宗教紛争をも克服しなければなりません。確かに、ヨーロッパはキリスト教ルーツを持っているでしょう。しかし、同時にユダヤ教ムスリム、その他のルーツを持っています。もし信用なさらないのなら、ユダヤ教に関する限り、ちょっと中央ヨーロッパの都市をどこか歩いてご覧なさい。またイスラム教について言えば、南スペインのどこかだけではなく、イスラムと関連があると思いもしないところに関連を見つけることでしょう。」「スペインでの2月20日の国民投票を迎えるにあたって、あなたは国民に良くいわれることは、最大の敵は無知と無関心だ、ということです。」「国民投票は、良く言われるように両刃の剣です。多くの場合、国民は聞かれたことに投票しませんでした。NATO国民投票のことを思い出してください。今や、スペインは最初に国民投票によって批准する国となったのです。私はスペインがイエスと答えることにいささかの疑いも持っていません。今までのところ、まだ国民全体が関心を持っていたり、憲法の充分な知識を持っているとは思われません。」「私はスペイン国民にヨーロッパの政治的計画に、最小限のコミットメントをお願いします。ヨーロッパは自動的に出来るものではありません。私は、我々はスペインで考えている、という感情にしばしば囚われます。スペイン人はヨーロッパびいきです。我々は決してヨーロッパに挑戦したことはないし、我々はそれを受け入れてきた。なぜなら独裁者の暗黒の時代に自由の世界、進歩の世界として、ヨーロッパは光であった。しかし、我々は“これはそれ自体で生じたことで、我々がコミットする必要はない、” とかんがえているという感情に時々囚われます。我々はコミットすべきだ、ほんのちょっと投票しにいくだけのテマであることだし、スペインのヨーロッパへの支持がこの投票の大きさによって量られるのだし、その結果は、国民投票が通過するかどうか余り確かではない国に対して、モデルの役を果たすことになるのだからです。」「もし他の国がノーといったらどうなるのでしょう?」「ヨ−ロッパ委員会はどうすべきか討議するために会合を開きます。しかし、ルクセンブルグのような人口の少ないところがノーというのと、これは最もあり得るケースですが、イギリスとかポーランドチェコ共和国がノーというのとは影響が違うでしょう。」「ではヨーロッパ委員会はそうなると、どう言うでしょう?」「その国の人に、では、あなた方は本当にヨーロッパの計画に関心を持つのか、それとも出ていきたいのか、を問うことになるでしょう。」「この憲法で何が欠けているのでしょう?」「それは相手が誰かによります。欠けていることも必要のないこともあって、私なら別な風に書くことがあります。例えば、私は強く抵抗したのは経済政策のcoordination共同です。経済成長の方が現在達成されていることよりも重視されているからです。中央銀行アメリカ連邦積み立て金のように、価格の安定だけではなく、経済成長を目的の一つにしています。」「どの部分は不必要でしょうか?」「第3部は、50年間の諸協定の複雑な要約ですが、あまりにスペースを取りすぎです。」「では社会的ヨーロッパの部分はどうでしょう。フランス社会党は短すぎると不満を述べていますが?」「私はEUがもっと社会政策により大きな権限を持つべきだと思いますが、しかし、それは諸国家の多数意見ではありません。それはお定まりの話で、多数が欲しなければ時期を待つ以外にはありません。しかし、それについては語るべき事は山ほどあります。社会的ヨーロッパとは何か?社会的なるものとは何であるべきか?など。」「非常に興味あることですが、或る有力な社会民主主義政党政府、例えば、イギリスはこの領域の進歩に対して最も反対するグループの一つであるということです。」「それにスウェーデンもです。スウェーデン人は世界で最も進んだ社会システムを持っていながら、ヨーロッパが社会政策を持つことに反対しています。それは、ヨーロッパがどんな社会政策を共同化するかが明らかではないからです。」「あなたはカタルーニアやバスクガリシアの言語が、ヨーロッパ諸制度の中で用いられることについてはどう思いますか?」「ヨーロッパ憲法はそうした論争に立ち入りません。それはその時々にヨーロッパ委員会が取り扱う事項だと思います。」

大変長くなりましたが、いろいろなことを考えさせるものと思い、翻訳してみました。私たちの視野にまだ入っていないかもしれませんが、やがて、中国との関係をもっと親密な関係にしないわけにいかなくなったとき、また、国際問題を戦争に関与することによって解決する方向が少数意見になって、国際社会連合の機関に共同参画しないわけにいかなくなったとき、あるいは、個々の問題について、すでに、例えば、最小限の人権問題、女性、低開発国の「人種」、労働権を持つ人の生活保障、人権保障等について、或いは人権に繋がる環境権について、国際機関の勧告や、国際的に設定された規範的基準を受け入れないわけには行かなくなったり、いかなくなりつつあるように、やがて、世界社会形成の動向が促進されることを考えるとき、このEUの経験は、日本人にとっても大事な経験として共有しておくことが必要でしょう。勿論日本にも専門家の人がだんだんと育ってきていて、最近はこの問題での発言も目立ってきました。私もこうした方々の研究に学んでいきたいと思っています。