スペイン伝統料理 干鱈入りご飯

干鱈入りご飯  ARROZ CON BACALAO

材料
塩抜きした干鱈 

玉葱
緑のピーマン
ニンニク

ローレル1枚
水 オリーブ油
ピミエントン(赤ピーマンの粉) すり切り大匙じ1杯

作り方
シチュウー用鍋(土鍋が望ましい。)にオリーブ油をドボッと1回分入れ、細かく切った野菜、米、干鱈の水に戻し塩抜きしたものを、この順序で入れて、一つ一つソテーしていく。そして最後にピミエントンを入れて良くかき回す。

別にニンニクを乳鉢に入れて良くつぶし、お湯とローレルを1枚入れて、米の上に振りまき、そのまま良く煮る。お湯の分量は米1.5杯につき2杯の割合。


(私の味見所見)
食味は、スペイン風・味ご飯です。私たちには馴染みやすい料理だと言えるでしょう。魚の干物は戦前の日本では、特に海岸を持たない地域では貴重なタンパク源だったと思いますが、干鱈は高級魚だったように記憶しています。当地では鱈の種類は多く、体長も非常に大きいものが多くて、昔は、沢山捕れる魚として最も広く食された魚の一つであっただろうと想像します。
 シチュー用の土鍋は日本の土鍋とよく似ていて、赤い土で肉厚の土鍋で、カスティージャのスープやシチュウ料理も小さな土鍋のような皿に入れて出すレストランが多いようです。「いわば日本の味ご飯」といいましたが、作り方は一般に米は洗わずそのまま使いますが、具とともにオリーブ油で炒めて、そこにスープや水を入れて、そのまま普通の料理のように煮ていき、米が煮えたかなと思う辺りで出来上がりという感じです。ですから、レストランの場合、注文聞いてから作ると時間がかかる割には、「ゴッチン」気味が多く、やはり家庭料理で戴くときの方が本当の煮上がりで、おいしくいただけるように思います。米と水の割合は、ここに言われているよりも少なくして、こちらのお米では1:1.1位にすると、日本のご飯のようになり、その方が我々には合うかもしれません。
 スペインの代表的料理として知られているパエーヤは(またはパエージャ。発音はどちらでも良い。)料理法としてはどちらも、オリーブ油で炒めるところは似たようなものですが、香料として、こちらは高価なサフラン抜きで、赤色の安いピメントンだけです。また、干鱈を使うのも、マリスコなどが主というわけには行かなかったということもあるのではないかと思います。実は、このシリーズをスペイン伝統料理と簡単に表記していますが、スペインは料理についても、伝統的には、非常に地域特性がはっきりしていて、個人的には、サラマンカの伝統的民衆料理は、山の中の豚放牧中心の田舎の料理という印象を実はもっております。ですから、このレシピ集は本当はサラマンカ地方の伝統料理と言うべきです。馬鹿にした意味ではありません。パエージャは、セヴィーリャやカディスなどの地方の料理だと言っても間違いではないでしょう。どうしても洗練されたセヴィージャバルセロナなどに行くと、サラマンカは土田舎の世界遺産という印象になってしまいますね。
 ここサラマンカイベリア半島の丁度真ん中にあるような位置にあって、だから、魚の伝統料理には、干鱈を水に戻して使う料理が多いようです。日本で言えば、私の祖父までの出身地である長野県と似たような位置にあると言ったら分かり易いかもしれません。全体として海抜が800-1000m近いところにあって、昔は海岸からの交通の便の悪いところだったことは明らかです。北から始まり南に降りてくるレコンキスタが、南を取り込み終わり、更に新大陸へと土地や富の「取り込み」の手を延ばして、銀を大量に自国に運び込んでいったわけでしたが、カディスなどの港から、マドリッドに到る「銀の道」がサラマンカを通っていきます。現在、めざましい勢いでインフラ建設真っ最中ですが、この道を長距離バスで通るとき、高い峠を延々と登っていかなければなりません。 坂を上るに従って、気温が下がっていくのが分かるほどです。魚や魚貝類の豊富なスペインですが、「銀の道」の時代は、よほどのことがない限りは、カスティリア・イ・レオンの人は新鮮な魚を食べることは出来なかったでしょう。米の田圃も、南だけのようです。
 というわけで、私の印象ですが、そうしたサラマンカ地方の特性を反映して、伝統料理は米料理についても、干鱈の味ご飯となったのではないか、というお話でした。